記憶

 

いつからか自分の生年月日を記入する時違和感を感じるようになった。

 

 

もちろん自分が生まれた時の記憶などないのだから親に言われた生年月日を記憶しているのだが、この自分で確認しようがないことを確かな事実だと認めていることに違和感を感じる。

 

 

このような他人の記憶を信じることだけでなく、最近は自分の記憶にも疑問を感じることが増えてきた。

 

 

今まで生きてきた中で何度も思い出す過去の出来事がいくつかあるが、その思い出がだんだん薄れてきて、自分の記憶に自信が持てなくなってきた。

 

 

思い出が確かに過去にあったと認めることができるのは、その思い出よりも近い過去の自分が何度か思い出しているという比較的新しい記憶があるからだ。

 

 

しかし又聞きする情報が元の情報とは少し違って伝わるように、又思い出しをした記憶も少し改ざんされて私に思い出されているような気がする。

 

 

自分の大元の記憶が薄れてきて、何度か思い出した過去の自分という不確かな証拠を信じて、またこの不確かな証拠を信じている現在の自分を未来の私がさらに不確かな証拠として思い出していくのだろう、何度も。

 

 

不確かなことを信じていたくない、確かなことだけ信じていたい。

 

 

自分の記憶すらどんどん不確かになって、自分の基盤となるものが不確かになっていって、とてもふらふら、不安定な感じがして不安だ。

 

 

自分がしたことも思ったことも何もかもなかったもののように、何も意味をなさないものになっていく感じがして不安だ。

 

 

 

 

 

 

生年月日に違和感を感じた時、何度もこの生年月日を書いてきているんだから!と言い聞かせ、疑う自分をなだめる。

 

 

これから毎回こうしていかなくてはならないのだろうか。

 

 

未来の自分に課された義務。

 

 

不確かに思える事柄が増え、不確かさに不安を感じながら自分をなだめることばかりになる未来を想像すると、そんなの耐えられなさそうでこれもまた不安だ。